太郎システム

コラム

No.08 初めての登校拒否

その日は突然訪れました。
ある朝、太郎が「今日は学校に行かない!」と宣言したのです!

藪から棒に何を言い出すのかと思い、「なんで?」と聞き返してみました。
すると、背中や BCG の痕を指差しながら、「こことここと、ここが痛いから、今日は病院に行く。だから学校には行かない!」と言うのです。
ほほう… 背中や BCG の痕が痛いというのは明らかに嘘っぱちですが、普段から絶対に行きたがらない『病院』を駆け引きの材料に使い、学校を休むという目的のために自らプランを立てて、プレゼンテーションまでしてくるとは…
なかなかやるなぁ、太郎。
僕はこの時点でワクワクが止まりません。
なぜなら、太郎が自己決定によって何かを成し遂げようとするとき、基本的にはそれを応援すると決めているし、その結果がどうであれ必ず良い影響を及ぼすはずだと信じているからです。
今のこの状況は、まさに貴重な学びのチャンスと言えます。
こんなにも楽しそうな駆け引きに、乗らないわけにはいかないでしょう。

即決で「よしわかった。今日は学校を休んで病院に行こう。」と返事をして、太郎が考えたプランを実行することにしたのです。

学校に欠席する旨の電話をかけた後、さっそく皮膚科の病院へと向かいます。
ここで問題になるのが、近所の皮膚科の病院は、なぜか毎日のように患者で溢れ返っていて、診察までの長すぎる待ち時間が苦痛でたまらないのです。
まるでグリフィスへの拷問かと言いたくなるぐらい、長時間の苦痛は続きます。
永遠に終わりが来ないのではないかと錯覚してしまう中で、「太郎さん、5番の診察室にお入りください。」という案内の声が聞こえた時は心からホッとしました。
来た!やっとガッツが助けに来てくれた!という心境です。
そもそも、絶対に受診しなければならない状況ではなかったこともあり、この退屈すぎる待ち時間が相当大きな破壊力を持って襲いかかってきたようです。
受診が終わって家に帰るころには、もう2人とも精神的にヘトヘト状態でした。
大きなミッションをやり遂げた解放感と安堵感からか、「やっぱ家が一番イイよね~!」とお互いに意思を確認し合い、1日の大半の時間を浪費した病院受診は終了したのです。

結局のところ、学校を休んで病院に行ったことで、何か大きな収穫があったかどうかは、はっきり言ってよくわかりません。
でも、太郎の考えたプランや渾身のプレゼンを無視して、学校に行くという選択をしていたら、きっと太郎の心の中にモヤモヤしたものがずっと残り続けていたはずです(病院に行けばきっと楽しい1日が過ごせたはずだ… など)。
言葉や数値ではうまく説明できませんが、自己決定による行動で得られた経験は、大人の都合などによって強制的に体験させられる経験と比べて、はるかに大きな学びです。
だからこそ、今回の太郎の行動はうれしかったし、単なるステレオタイプによって『学校は絶対に行かなければならない場所』という考えに染まっていないところからも、究極の変人になるための第1歩は踏み出せているのではないかと思います。

ちなみにこの日の夜、「太郎、明日はどうするの?」と聞いたら、満面の笑みを浮かべて「明日は学校に行く!」と言っていました。
明日も病院に行くとか言われたらどうしようかと思ったのですが(そう言われたらもちろんその通りに実行しますが)、病院のつまらなさや学校の楽しさなど、自分の中でいろいろと納得できる部分があったのだと思います。
次の日から、何事もなかったかのように平然と学校に通っている姿を見ると、あの超絶退屈な時間もそれなりに必要なものだったのでしょう。
ほんと、自己決定って大事ですよね。

こうして、1日だけの登校拒否は終わりを告げたのです。

これは大人にも言えることですが、自分自身の中から湧き出てくる感情、心を揺さぶる衝動に素直に生きることは素晴らしいことであり、AI には到底できないことです。
さらに、自分のモチベーションを高く維持し続ける方法を理解して実践している人であれば、創造性の伴わない知的労働のほとんどが AI に代替される時代が来たとしても、そこから新しい価値を生み出すことだってできるでしょう。
自分のやりたいことに対するモチベーションが高く、自己決定できる人は強いのです。

次回の太郎の『登校拒否プレゼン』がいつ頃披露されるのかはわかりませんが、楽しみに待っていようと思います。

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