太郎システム

コラム

No.09 中学校の特別支援学級ってどんな感じ?

先日、中学校校区内にある小学校が主催する、ある交流イベントに参加してきました。
その名も『なかよし交流会』です。
こういった学校主催のイベント名は、ほぼ間違い無く『なかよし』か『ふれあい』か『おたのしみ』の三択から適当に付けられるという謎のルールがあるようで、もう少しネーミングセンスをどうにかできないものでしょうか。
そもそもイベント名なんてどうでもいいと思っているのであれば…
いやまぁ、細かいことは気にしないことにしましょう。

さて、このイベントの参加対象者は、地区の中学校校区内にある小学校3校の特別支援学級に在籍している児童とその保護者となっています。
そこに便乗させてもらうかたちで、同じ中学校校区内にある、太郎が在籍している特別支援学校の児童とその保護者も参加対象にしてもらっているようです。
ありがたや~。
イベントを主催するのは、地区の『特別支援教育研究会』という組織です。
おそらく各学校の支援学級担当の教師や管理職によって構成されている組織だと思われます。
僕としては、支援学級の教師による特別支援教育の研究というものが一体どのようなものなのか、以前からずっと興味がありました。
今回の『なかよし交流会』に参加することで、その研究成果や地域の小学校が実現しようとしている特別支援教育の本質に触れることができるかもしれません。
僕が今回『なかよし交流会』への参加を決めた最大の理由も、実はそこにあるのです。

開会式の時、普段は絶対に市民と議論も対話もしない『教育委員会』の人がここぞとばかりにやって来て、フレンドリーで好感の持てる挨拶をしていました。
でも僕の脳内では「いじめを認めていたにもかかわらず、裁判が始まると急に手のひらを返したように「いじめは知らない」と主張を始めた、あの鳥栖市教育委員会だよね…」
という最近のニュースでのネガティブイメージが、どうしてもチラついてしまいます。
まさか挨拶の中で「鳥栖市では、いじめの被害者を絶対につくりません! なぜなら、学校や教育委員会は、いざという時には君たちを守らないからです!」なんてことを言い出さないかとヒヤヒヤしました。
さすがにそんな話、子ども達に聞かせるわけにはいきませんからね。
あっ別に教育委員会をディスっているわけではありませんよ! パート2。
ニュースになっている例のいじめ裁判ですが、教育委員会としても大人の事情があるだろうし、教育委員会に限らず、言ってることとやってることが違う人は世の中にはたくさんいます。
そもそも何が正義で何が悪かなんてはっきりしないのが社会というものであり、人類が最も大切にしながら成熟させていくべきものの1つである『教育』もまた、そんな社会の一部にすぎないことを改めて実感したという、ただそれだけのことです。
市民から選ばれたわけでもない人達に、『期待』という名の重荷を背負わせるわけにはいかないでしょう。

話が大幅に脱線してきたので、本題のほうに戻ります。

さて、実際にイベントが開始されたものの、特別支援教育のコンセプトが見える場面は特にありませんでした。
そりゃそうですよね。
イベントの内容としては、レクリエーションを楽しみながら親睦を深めるというものですから。
ただ、イベント自体は楽しかったです。
控えめに言って、超! 楽しかったです。
太郎と一緒に童心に返って本気でダンスを踊ったし、じゃんけんゲームもがんばって渾身のグーを出しました。
ボール運びゲームでも、大声で「カキフライ!」と好きな食べ物の名前を叫ぶことができました。(そういえばカレーライスのほうが好きかも… とすぐに後悔しましたが)
主催者の狙い通りにイベントを楽しみまくっている自分自身に悔しさを感じる中で、ひとまず当初の目的はどうでもよくなっていきました。
たくさんの人が集まって、くっだらないダンスを一緒に踊ることが、こんなにも楽しいとは想像もしていなかったわけですね。
郷に入れば郷に従ってみるのもイイもので、 僕の認知の世界がわずかに拡張される瞬間を感じることができたのは良かったです。
これはまた、来年も太郎と一緒に参加しなければなりません。

イベントの最後には、中学校の特別支援学級の担当教師による保護者向けのミーティングがあったので、こちらにも参加してみました。
ミーティングの内容は、保護者への事前アンケートに記入されていた質問に答えていくというものだったのですが、話題の中心は中学校卒業後の進路についてでした。
これから中学校に入学しようという保護者の多くが気になる内容というのが、『中学校卒業後の進路』というのにはちょっとビックリです。
みなさん気が早いなぁ。
ミーティングの中で少しだけ、中学校や小学校の特別支援学級が考える特別支援教育というものの姿がぼんやり見えてきた気がしました。
それは特別支援教育というよりは、特別支援学級という場所が、通常学級のワンランク下に位置する学級であり、この学級に在籍する子ども達は、将来を妥協しながら生きていくことになるというビジョンを、当たり前のように学校と保護者が共有しているというものです。
マ…マジか。
『本気』と書いて『まじ』なのか…
僕にはちょっと理解できない部分なのですが、おそらく世の中の常識はそういうことなのでしょう。

ありがたいことに、全体ミーティングの終了後に、個別対応の質問タイムも設定してくれていました。
せっかくのチャンスなので、僕も気になっていることをストレートに質問してみることにしました。
僕が気になっていることというのは、中学校の支援学級では、本人が熱中していること(ここではプログラミングを例に出しました)に授業時間を使って取り組むことができるのかどうかというものです。
授業中にパソコンを扱うということに関しては、1名だけ前例はあるものの、それは能力を伸ばすためというよりは、心を落ちつかせるための手段として実施しているということでした。
それでも前例であることには違いないということで、そのような取り組み自体は可能だということです。
話の中で『前例』という言葉が多く登場することにモヤモヤしたのですが、どうやら微妙に趣旨が異なる取り組みであっても、前例という建前があれば、意外とスムーズに特別な教育方法などへの対応は可能っぽいです。
つまり、前例となる事案を少しずつ拡張しながら、さまざまな取り組みに応用しておけば、本当の意味においての個別のニーズに対応した教育が実施できる可能性が高いという印象を持ちました。

僕が希望する教育方法を実施する場合においては、朝の15分間は全員で同じカリキュラムに取り組むなどの制約はあるものの、自分用のノートパソコンを学校に持ち込んで(担当教員のスケジュール上、パソコンルームを頻繁に使えないので)、午前中はひたすらプログラミングに熱中できるような環境は作ることができるということです。
実施できる日数に関しては管理職との協議が必要なものの、週に3日間ほど設定することは可能だろうということです。
それってメチャメチャ良くないですか。
特別支援学級でも、そこまで自由で柔軟な対応をしてもらえるのであれば、太郎の選択肢に十分入ってきます。
ただ、いくつか注意点もあって、他の生徒が触ったりしてパソコンが壊れる可能性もあるので、そうなっても問題無いという前提であることや、通常の授業を受ける時間が少なくなるので、内申点をつけられないなどのデメリットがあるということでした。
それについてはぜんぜん問題無いし、逆に言えばデメリットがそれだけしかないのであれば、学校の授業時間を使って個別の能力を高めることに熱中できるというのは魅力的ですよね。
パソコンなんかは壊れることを前提とした低価格のものや、壊れにくいモデルを購入するのは当然だし、内申点についてはそもそも必要性を感じていません。
なぜなら、高校は単位さえ取ることができれば、できるだけ特色のあるおもしろい学校を選びたいし、大学進学をするのであれば基本的にはAO入試しか考えていないからです。
一般入試という、突出した能力を持たない人達が罰ゲーム的な暗記勝負を課せられ、未来社会の中で何の役にも立たない能力を評価の対象としている極悪システムのために、大切な時間を浪費させるつもりは毛頭無いわけです。
PISA のような無意味なものに未だに翻弄され続けているだけなのか、20年前の社会の価値観から抜け出せずにいるだけなのかはわかりませんが、学校現場はもう少しまじめに高等教育について考えたほうがいいですよ。
大学は突出した能力を極めるための場です。
決して、自らの能力を育むことなく、ペーパーテスト対策に時間を浪費してきた人達が、自分探しをするために立ち止まって悩むような場所ではありません(そういう一面が良い結果を生むこともありますが)。
ハーバード大学やケンブリッジ大学など、世界の名だたる有名大学が AO 入試に力を入れ、アドミッションズ・オフィスに優秀な学生が集まり、卒業後に社会の中で活躍しているのは当然の結果であり、そのような事実を多くの人達はどう思っているのでしょうか。
日本の大学でも、AO 入試の比率が増加していくことはすでにわかっています。
つまり、AO 入試という選抜システムにこそ社会から求められる本来の能力を評価できる仕組みがあるということです。
2020年度からがひとつのキッカケになるとは思うのですが、学校の教師が大きく考え方を変えなければならないタイミングはすでに来ており、それができない教師は存在意義が無くなるでしょう。
これは通常学級での教育はもちろん、特別支援教育についても同じことが言えます。

そういうことを踏まえた上で、中学校の特別支援学級でどのような取り組みが可能であるかを確認できたことは大きな収穫でした。
とはいっても、太郎はまだ小学1年生なので、中学校を意識する頃にはまた大きく制度が変わっている可能性もあります。
ただ、突出した能力を極めるということに関しては、どういう状況下でも必要なことなので、その信念だけはぶれないようにしなければ… と改めて実感しました。

そういうわけで、『なかよし交流会』に参加してみた結果、大きな収穫が2つあったということをここにご報告いたします。
1つ目は、たくさんの人が集まって、くっだらないダンスを一緒に踊ることの楽しさ。
2つ目は、地域の中学校の特別支援学級が、結構イケてるじゃんということです。

太郎が中学生になった時、もしかしたら保育園時代の友達と一緒に学校生活を送ったり、寄り道しながら登下校したりしてるかもしれないですね。
保育園時代の太郎の同級生のみなさん、そん時はよろしく!

ページのトップへ戻る